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日宣のファンベースマーケティングが選ばれる理由とは?チーム体制を徹底解説

企業は今、少子高齢化、人口減少、資源不足、物価高など、様々な社会変化の中にあります。VUCAの時代(Volatility:変動性、Uncertain:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)という言葉もよく耳にするようになりました。この造語が表すように、先行きが不安定で混沌としているビジネス環境において、これまでと同じ戦略で売上を維持したり伸ばしたりすることは難しくなっています。そのため、各企業は従来とは異なる、新しい視点で顧客と向き合うことが重要になっているのです。 今回の記事ではそのうちの1つである顧客のコミュニティを活用した『ファンベースマーケティング』の成功事例や注目されている理由について徹底解説していきます。

1 ファンベースマーケティングとは

ファンベースマーケティングとは、自社ブランドやコンテンツのファン、すなわち熱狂的な既存顧客をベースとして売上を高めていくことを目的としたマーケティング手法です。

少子高齢化により消費者人口が減少、それに伴い市場全体がどんどんシュリンクしていく中、多くの企業では新規顧客の呼び込み以上に既存顧客の囲い込みに主眼を置くようになっています。

〇ファンベースマーケティングが注目されている背景
もちろんこれまでファンの存在やその熱量が軽視されていたわけではなく、2024年現在、これまで以上にファンの存在が注目されるようになっている状況にあります。それはなぜか、その理由について2つ考えることができます。

1つ目の理由は『新規顧客の獲得が難しくなっている』からです。
日本は世界で最も少子高齢化が進んでいる国とされています。超高齢化社会に突入している現在、企業は減少し続ける消費者人口という同じパイを奪い合っている状態なのです。つまり、これまでのように他企業と差別化を図ることによって新規獲得を狙う戦略のハードルが高くなっている、と言えます。そこで、企業は新規顧客を増やしていくことと同様、もしくはそれ以上に既存顧客及びファンを離さないように囲い込んだりファン化を狙ったりする戦略にシフトするようになっていきました。このことはつまり、短期的に売り上げを伸ばしていくのではなく、中長期的な観点で目標を見据えたときにLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を高めていくことの重要性が大きくなっていることを意味しています。

2つ目の理由は『親しい人や応援している人が発信する情報をもとに消費行動が決定されるようになっている』からです。
インターネットやSNSの普及に伴い、人が1日のうちに取得する情報量は格段に増えました。情報量が増えた結果、企業が届けたい情報はターゲットには届かず、自社ブランドやコンテンツを見つけ選んでもらうことが容易ではなくなりました。そうした中、消費者は膨大な量の情報を無作為にキャッチアップするのではなくて、信頼する友人・知人、応援し慕っているインフルエンサーが発信する情報を意識的に選別して、商品やサービスを選択する根拠にする傾向が強くなっています。つまり、企業が届ける情報より、消費者がSNS等で発信する情報の方が高い価値を持つ場合があるのです。
これを利用するならば、情報の発信源となる企業の既存顧客がコアファンであればあるほど、情報拡散を担ってくれることが期待できるようになります。また拡散された情報が潜在顧客にリーチすれば、新規獲得に寄与する可能性が期待できます。

以上の理由から、ファンベースマーケティングはこれまで以上に注目されていると考えることができます。少子高齢化といった社会問題、デジタル化や個人化といった社会変動によって消費構造が大きく変化したことで、従来のマスマーケティングの方法がなかなか通用しなくなり、企業のマーケティング戦略は様々な切り口で行われるように変移していったのです。もちろんこれは、Webに限った話ではない点にも注意が必要です。

〇ファンコミュニティの重要性
ファンベースマーケティングを考えるとき、ファンを一人一人個別に捉えるだけではなく、同じ熱量や共通の価値観のもと繋がっている複数のファンを1つの集団、すなわち同じサービスや商品に共感し愛着を持つ『ファンコミュニティ』として捉えることが重要となります。

ファンコミュニティそのものは社会のデジタル化や個人化が浸透する以前から存在していました。しかし、インターネットやSNSの普及に伴って他者と簡単に繋がれるようになったことでその規模は拡大し、またコミュニティが持つ影響力も増していきました。そのため企業にとっては自社を支えてくれる重要な存在となっています。例えば彼らは、自らがファンとなり応援しているブランドや商品をサイトやブログでレビューしたりSNS上で友人にお勧めしたりします。ファンが個々に情報を発信するのではなくて、複数のファンが同調的にそれを行うことで情報の信頼性や影響力は増し、結果的にコミュニティ外の消費者にブランドや商品の訴求をすることが達成されるのです。この場合、ファン及びファンコミュニティは企業にとっての広告塔の役割を担っていると考えることができることは、ファンベースマーケティングを行う大きなメリットの1つです。
この考え方がファンコミュニティの力をマーケティングに活かす上で大切になってきます。

2 ファンベースマーケティングの成功事例

消費者を商品やサービスを売り込む対象としてではなく、好きになってもらう=ファンになってもらう対象としてアプローチすることがファンベースマーケティングの基本的な捉え方です。企業の「やりたいこと」を消費者に押し付けるのではなく、消費者の声に耳を傾けて商品開発のヒントにしたり、サービスを改善したりしてファン化を促進させます。

では実際、ファンベースマーケティングは具体的にはどのような方法があるのでしょうか。ここでは日宣の事例の1つを紹介します。

〇ファストフードブランドのファンミーティング
日宣が支援する有名ファストフードブランドでは、ブランドから特別に招待された熱量の高いファンの方限定のクローズドイベント「ファンミーティング」を実施しています。イベント内容は発売前の新商品を食べられることや、ブランドの醍醐味でもある商品カスタマイズを自由に楽しめる「わがままオーダー」と呼ばれるコーナーがメイン企画になっています。熱心なブランドのファンにとってはぜひ一度は参加したくなるようなコンテンツです。また、ブランドの担当者と参加者の交流の場も設けています。ブランドにとってはファンの生の声を聞くことができる場であり、またファンにとっては普段知ることができない貴重なブランド側の話を聞くことができる場であるため、両者にとって満足度の高いイベントとなっています。毎回の参加者アンケートでも高い評価を頂くことができています。

ファンミーティングに招待されるための具体的な条件は公開していませんが、公式Xアカウントからは「#〇〇(ブランド名) でいっぱい投稿してくれたら…もしかしたら…お声が…かかるかもしれません」と案内をしています。そのため招待されることをモチベーションにしている熱心なファンは、ブランド名のハッシュタグをつけて積極的に投稿してくれています。また一度ファンミーティングに参加したユーザーは『#チーム〇〇 ●期生』という特別な称号を名乗ることができ、Xで投稿する際にはそのハッシュタグを付けて投稿している様子が確認できました。

以上のように、熱心なファンであればあるほど嬉しいインセンティブが用意されていて、なおかつ企業視点だとファンが熱心であればあるほど情報を広めてもらえるという関係にあることが分かります。つまり、企業とファンがWin-Winな関係にあるのです。上記ファストフードブランドの例では、ファンミーティングを通してファンの育成、すなわちロイヤルティ向上に寄与していると考えることができます。

3 ファンベースマーケティングを成功させる社内体制

マーケティングを運営・運用するにあたっては様々な角度から既存顧客及びファンのことを観察し、理解する必要があります。なぜなら「ファンコミュニティ」は同じ熱量で形成されているファン達の集団と捉えることができる一方、ファン同士で価値観が全く同じかというとそうではないからです。そして、情報との接点が多い世の中であることから価値観は可変的で流動的です。これが正解!という必勝パターンは存在しないため、共通のニーズやインサイトをいったん抽象化する行程が重要になります。
そのため社内体制の観点からいえば、どこかの専門的な部署だけが案件を担うのではなく、営業やスタッフがワンチームとなって実践することが必要です。そのような体制を整えることでフレキシビリティやアジリティを発揮することができるようになり、効率的に成果をアップさせることが望めるようになります。

〇社内チーム体制のポイント
では日宣ではどのようなチーム体制でファンベースマーケティングに取り組んでいるのか。2つの特徴について説明します。

1つ目は、営業チームが運営・制作業務にも積極的に関与していることです。営業として顧客折衝を行う一方で、社内の制作チームと密にコミュニケーションを交えながら企画や施策の提案、資料作成も担います。営業チームが企画書作りから提案まで、一気通貫で行うこともあります。このような取り組み方をすることで、例えば営業のシーンで顧客から企画内容や提案資料について質問をいただいたときに、質問を受けたすぐその場で担当スタッフのように詳しくお答えすることができます。

2つ目は、営業チームとスタッフチームで頻繁にコミュニケーションをとる場を設けていることです。例えば毎週必ず社内ミーティングを30分〜1時間程度で設け、情報の共有やタスクの進捗報告、アイデア出しなどをチーム全体で行います。営業とスタッフの間にある認識の齟齬をなくすことや、スムーズにクライアントからのチェックをもらえるようなフローを形成することができます。

以上の2つのポイントを徹底してチーム体制を整えることで、営業・スタッフ双方の観点を加味した企画を考案できるようになるため、提案の幅が広がります。また同様に、ファンに対する多角的な捉え方ができることで粒度の高いマーケティング戦略に落とし込むことができるのです。加えて、ワンチームでいることで確認フローを削減できるため業務効率化や生産性向上にも寄与し、PDCAを高速サイクルで回すことも可能になることも強みの1つです。

〇社内のノウハウやナレッジ共有について
このように営業チームが運営・制作領域の業務もシームレスに担えていることの秘訣は、社内でノウハウやナレッジを共有する仕組みが形成・活用されていることにあります。

2023年の夏、日宣のマーケティングスタッフチームの1つであるコミュニティマーケティング部が主体となり、営業チームに所属する全社員向けに、ファンベースマーケティング戦略の一環としてSNSマーケティング研修を行いました。座学をメインとした研修でしたが、コミュニティマーケティング部が普段どのようなロジックで企画を考えているのか、またどのような分野において専門性を保持しているのかなどを営業チームに詳しく共有する機会になりました。日宣の強みは営業チームとスタッフチームが同じ目線、同じロジックで案件に臨んでいることにあります。上段でも述べた通り、提案や新規開拓に幅を持たせることが可能になるのです。

会社としてこれからファンベースマーケティングという新しい領域に注力するとなったとき、どの部署もどのチームも足並みをそろえていることで効果的かつ迅速に結果にコミットすることができます。クライアントへの結果にコミットすることはもちろんのこと、「営制の壁」を越えてワンチームでいることを目指すことは、会社がファンベースマーケティング事業を拡大していく上でも非常に重要な要素だと言えるでしょう。

4 新しいファンの獲得につながるマーケティング

今回の記事では、企業にとってファンの存在がこれまで以上に価値を高めること、そしてこれからも自社のファンでいてもらうための努力を絶えず行っていくことが重要だと説明してきました。そして、それを達成するためには企業側がファン及びファンコミュニティをどのような属性として捉えるか、理解しているかが大切です。「自分たちのファンは○○な人たちだ」ということを見誤ることなく戦略から企画にまで落とし込むことができれば効果的にファンを育成することができ、ひいては話題量を増やすことにも繋がる可能性が高いです。そうなれば、新規顧客の獲得や売上拡大を狙っていくことが次にクリアするべき課題になります。

今後、市場規模が縮小していく中で企業が存続していくためには、ファンをはじめとする消費者に選ばれ続けることの重要性が高まり、取り組むべき最優先課題になるでしょう。


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