家計簿にハマらない「世帯が円滑に回るための消費」
世帯研究所(以下、世帯研)では、世帯消費に関する生活者の意識や行動について知るため、定期的にアンケートを実施しています。本記事では、2023年2月に実施したアンケートより、ハイライトをお届けします。
世帯が円滑に回るために、モノやサービスの力は必要
世帯が円滑に回る / 世帯を良好に保つのための必要経費として、モノやサービスを購入したことがあるか、という問いに対し、過半数が「ある」と回答。多くの世帯が、モノやサービスを活用して、世帯を良好に保とうと試みていることがわかります。実際に購入されているモノ・サービスをざっとカテゴライズしてみると、以下のようになりました。
●外食やデリバリーなど食事に関するモノ・サービス
「デリバリーサービスの『Uber Eats(ウーバーイーツ)』や『出前館』など」(34歳・女性)
「食事のテイクアウト、外食、食材セットの購入」(45歳・女性)
「『Oisix(オイシックス)』」(44歳・女性)
●家事の負担を軽減するためのモノ・サービス
「便利家電や手軽な掃除グッズなど」(49歳・女性)
「『ルンバ』」(36歳・女性)
「ハウスキーパー」(58歳・男性)
●あったら生活が便利/快適になるモノ・サービス
「スマートホーム機器」(34歳・男性)
「ウォーターサーバー」(39歳・女性)
「『Amazon』などの配送サービス」(36歳・女性)
●世帯の楽しみにつながるモノ・サービス
「退屈しのぎのCSチャンネル放送」(45歳・男性)
「カタログギフト」(47歳・男性)
●その他
「電気圧力鍋」(42歳・女性)
「『セコム』」(55歳・男性)
「太陽光発電システム」(57歳・男性)
個人ではなく、世帯のニーズを満たす目的で行われる消費を「世帯消費」としたとき、そのなかには、必ずしも生活上必須とされるモノ・サービスだけではない、さまざまな消費があるようです。
「個人のための消費」と「世帯のための消費」の汽水域にチャンス?
「個人のための消費」か「世帯のための消費」か、区別しづらいものがあると答えた人は57%でした。一方、「世帯のお金」と「自分のお金」を明確に管理しているか、という問いに対して「はい」の回答は43%。この結果から、個人のお財布と世帯のお財布、また個人のための消費と世帯のための消費の境界線が曖昧な世帯が少なくないことがわかります。
さらに、約半数の人が、使うのは主に自分だが、世帯のためになると思って買ったモノや利用しているサービスがあると回答。自分だけが使うものでも、それが世帯のためになるものであれば、世帯のお財布から購入してもよいと思うという人は62%となっており、「世帯のためになるけれど限られた人しか使わないもの」を世帯のお財布から買うか、個人のお財布から買うか、の判断は世帯やそれぞれの考え方によって幅がありそうです。
とある世帯インタビューで、「世帯のお財布から買うために家族に交渉するのが面倒だから、自分のおこづかいから買っている」「世帯のための家事でも、自分がラクをするためのモノなので、世帯のお財布で買うのは罪悪感がある」という声も(以上要約。詳しくはインタビュー記事をぜひご覧ください)。
もしかしたら、「世帯のためになるもの」かつ「世帯の誰かしか使わないもの」のなかには、世帯のお財布から買えるとなれば、もっと購入されるモノ・サービスがあるかもしれません。
世帯のお金で個人を自由にすれば、世帯はうまくいく?
世帯が円滑に回るために「個人の自由」や「ひとりの時間」は必要だと思う、と答えた人はなんと約9割にのぼりました。一方、「個人の自由」や「ひとりの時間」をつくるために、世帯のお財布からお金を出すことがある、と答えた人は半数を割る結果に。
今後、「個人の自由やひとりの時間を確保することで世帯が良好に保たれる」ということが世の中の共通認識として浸透していけば、そのための消費が世帯消費として行われる、つまり市場が拡大したり、新たなビジネスが生まれたり、といったこともあるかもしれません。
実際、先ほどとは別の世帯のインタビューでは、「夫だけが使うものだけど、それで気分よく働いてくれるならと車を購入した」「夫婦で過ごす時間は必要だと思うけれど、それぞれ別行動で楽しめる場所を選んでいる」というご夫婦にも出会いました(以上要約。詳しくはインタビュー記事をぜひご覧ください)。
まとめ|家計簿にハマらない「世帯消費」
世帯研が注目する「世帯消費」のなかには、食費や娯楽費など一般的な家計の費目に振り分けることのできない、「世帯が円滑に回る/世帯を良好に保つための消費」が存在していることが見えてきました。
一方で、それが「世帯消費」とされるべきか「個人消費」として処理されるべきか、については、世帯や個人によってさまざまな考え・判断がありそうです。
特に世帯全体のメリットにつながるものでも、実際に使用するのは世帯の中の誰かだけ、というモノ・サービスは特に判断が分かれる傾向にあり、買う・買わないに大きく影響しているケースもありそうだ、と世帯研は推測します。
さらに言えば、モノ・サービスの提供側は世帯全体のメリットを可視化したり、世帯をより良く保つ効果のあるものとして訴求することで、世帯内で共通認識が生まれ、購入検討が一気に進む、といったことがあるかもしれない、とも考えています。
世帯研では引き続き、このテーマについての深掘りを含め、世帯がうまくいくためのアイデアや、そこに付随する新たなマーケットの発見を目的に、「世帯消費」についてさまざまな角度から調査や研究を行い、公式noteで発信していきます。
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