日宣 世帯研究所
“世帯の個人化”によって変わる家事の捉え方
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“世帯の個人化”によって変わる家事の捉え方

日宣 世帯研究所

一緒に暮らす世帯であっても個々の価値観を持ち、尊重し合いながら生活する時代。多様化社会を背景に、世帯の形も変化のさなかにあるのではないでしょうか。世帯研究所では、世帯内に起きている変化を“世帯の個人化”と捉え、その影響を考察。家事代行サービスを営む(株)ワンズコピーの佐和田久美さんをお招きし、家事から見える今どき世帯について探ってみます。
〈聞き手・世帯研究所 岩岡明愛〉

【佐和田久美(さわだ・くみ)】(株)ワンズコピー代表。子どもと家族の笑顔のために、2010年に家事代行を請け負う同社を設立。また、子どもに向けた新たなサービスとして、2022年には墨田区に子ども食堂を開設した。著書に「『モノを正しい場所に置く』だけで部屋は自然とキレイになる」(文響社)など。

家事外注派の世帯が増加?
その共通点とは

世帯研究所・岩岡(以下、岩岡):
共働き世帯の増加*1に伴い、家事代行サービスを利用する世帯が増えている*2と聞きますが、佐和田さんのもとでは、特にどんな世帯の方々が利用しているのでしょうか?

佐和田さん(以下、佐和田):
共働き世帯の方の利用は特に増えています。近年、家事代行のマッチングアプリの普及もあり、依頼のハードルが下がっているようです。さまざまなお宅にお邪魔していて、唯一共通していると思うのは、“モノの多さ”かもしれません。

岩岡:
デジタル化が進んで個人のニーズに沿った情報が求められるなど、多様化社会の中で、「個」が尊重される社会になってきたと思うんです。家族で暮らしていても、多様化が受け入れられる価値観のもとであれば、趣味や仕事道具など、“個人のモノ”って今後も溢れていきそうですよね。

佐和田:
確かに家族のいるお宅では、個人の持ち物が共有スペースにまで置かれてしまっている状況をよく目にします。いわれてみれば、“世帯内の個人化”の影響が表れているのかもしれません。ただ中には、単純に片付け方を知らないからという場合もありますが。どちらにしても自分たちだけでは対処しきれない世帯が増えているように感じます。

岩岡:
世帯内でも個人個人が自立していて、お互いの時間や価値観を尊重できる「個人化」は良いことだと思うのですが、一緒に暮らす上でのデメリットもあるようですね。家事代行に助けを求める理由が一つわかりました。

佐和田:
ただ、そういった世帯の方がお互いを尊重できるので、家事を“世帯ゴト化”して考えられているという一面もあります。家事代行サービスを頼み始めてから「奥さんの機嫌が良くなった」と旦那さんが喜ばれることも。お互いの時間や価値観を大切にしているからこそ、そういった人の変化にも気づくことができるんだと思うんです!

岩岡:
なるほど、なんだかほっこりするお話です。「個々が家事に縛られず、自由があっていい」という考え方なのでしょうか。誰かの役割と決めつけずに「世帯ゴト化」して考えた結果、家事代行サービスという選択肢に行きついたということですね。

佐和田:
でも中には、旦那さんに秘密で依頼してくる方もいらっしゃいますけどね(笑)

家事負担を生み出す原因は
世帯内ヒエラルキー?

岩岡:
共働き世帯の増加と女性の社会進出で家事代行サービスが浸透した反面、サービスに行きつかない世帯もありますよね。依頼したらラクになれるのに、どうして外注という選択肢を持たないのでしょう?

佐和田:
世帯内のヒエラルキーも関係しているのかも。共働きであっても、たとえば旦那さんが主導権を握る世帯だと家事代行サービスを頼みにくかったりするみたいで。

岩岡:
世帯内ヒエラルキーが家事負担にも影響してくるなんて想像もしていませんでした。

佐和田:
特に普段から家事をしない旦那さんだと、家事代行サービスの必要性も理解しづらいと思うんです。先ほど話した秘密でお願いしてくる方も、そういった背景から旦那さんの承認が得られずにいるのかなと。

岩岡:
一番理解してほしいはずの存在なのに……。家事代行サービスが浸透した背景には、お互いの時間を尊重し合う考えが定着したからだと思ったのですが、そうではない世帯もまだあるんですね。そういった世帯だと、そもそも家事の話自体が議題に上がりづらそう。

佐和田:
議題にならないと、負担は増えていくばかりですから、家の中はパンクしていきます。家事を誰かの仕事と押し付けていたり、“世帯ゴト化”して考えることができていないのでしょう。まずは、家事を一緒に暮らす世帯全体の問題として捉えることから始めないと!

岩岡:
家事代行を利用する世帯のような尊重の価値観ではなく、“それぞれの役割は、自分で行うのが当然”といった極端な考え方もまだ根強く残っているのかもしれませんね。

佐和田:
特に女性は、家事は自分の仕事だと思い込んでしまっている場合もあります。そう思い込んでいると、家事を手放して外注するという選択肢には、なかなか行きつかないでしょう。

今どき世帯が求めているのは
キレイよりも“安心感”

岩岡:
モノと情報があふれる情報化社会では、スマホのチェックさえ1日のタスクだし、やることばかりが増えている時代だと思います。そんな中で、毎日の家事を“自分がやらなくては”と思い続けるのは、しんどいですよね。

佐和田:
家事代行サービスの利用世帯を見ていると“部屋をキレイにしたい”という欲求よりも、“安心感”を求めているような気がするんです。部屋が散らかっていたり、やるべきことに追われているという焦燥感が強いのかも。散らかっている部屋は、見るだけでイライラしたり、不安になりません?(笑)

岩岡:
なりますね。でも、またモノを増やしてしまう。まるで負のスパイラルです……。

佐和田:
今どきの人たちは、モノに囲まれることで、時代から取り残された感覚や、おいてけぼり感にさいなまれることなくいられるのかなと。

岩岡:
それはあるかもしれません。そういった今どき世帯こそ、家事を外注するという選択肢をもっておくと、常に心が健康でいられそう!今の時代ならではの安心の得方といえるのではないでしょうか。今は、企業の福利厚生に家事代行サービスが含まれている場合もありますし、試しに使ってみるというのもアリですよね?

佐和田:
うんうん、家族内で反対がある場合にもおすすめです。一度体験してみると、家族の反応も変わるかもしれません。家事の負担や時間を削減できれば、その分、ほかのことに取り組めたり、世帯内の生産性を上げることにもつながります。良いサイクルを築くスタートラインに立ってほしいです。

岩岡:
世帯内の生産性をあげるっていいですね。情報とモノが溢れる時代に暮らす世帯にとって、家事代行サービスは心の余裕を保つためにとても重要な存在だと気づかされました。世帯内の「個人化」に合わせて、家事の捉え方にも柔軟になるべきかもしれません。貴重なお話をありがとうございました!

まとめ

【参考】
*1:専業主婦世帯と共働き世帯の推移 – 厚生労働省http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000118655.pdf

*2:タウンページ「家事代行サービス登録件数No.1は、滋賀県!〜「家事代行サービス」の都道府県分布と登録件数推移〜」
http://tpdb.jp/townpage/order?nid=TP01&gid=&scrid=TPDB_GG11

 

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