日宣 世帯研究所
世帯内の家事シェア過渡期。「掃除」にあらわれる課題とは?
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世帯内の家事シェア過渡期。「掃除」にあらわれる課題とは?

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家事シェアが進んだ現代。「掃除も分担しているよ!」という世帯でも、どこかでモヤモヤを感じていませんか? そんな今どき世帯の掃除をテーマに、「お掃除オーガナイザー®」の木村由依さんと一緒に考えてみました。
〈聞き手・世帯研究所 飛川亮〉

【木村由依(きむら・よしえ)】 女性のためのハウスクリーニング「クリスタルミューズ」主宰。都内大手百貨店の販売職を経て、2008年に掃除と片付けのプロとして独立。独自の「クリスタルメソッド」で個人に合った掃除と片付けのサービスを提供。2011年にはお掃除講座、個人レッスンもスタート。テレビ東京/BSジャパン「なないろ日和」ほか、メディアにも出演。

掃除ができない世帯が
増えている?

世帯研究所・飛川(以下、飛川):
木村さんは、掃除と片付けのプロとしてたくさんのお宅をきれいにしていますよね。並行してお掃除のレッスンを始められたのはどうしてですか?

木村さん(以下、木村):
30〜40代のお客さまと話すうちに、掃除のやり方を知らない人がすごく多いことに気づいたんです。たとえば、洗剤には液性がありますよね。酸性とかアルカリ性とか。

飛川:
酸性とアルカリ性で落ちる汚れが違うんですよね。私も以前は知りませんでした。「お風呂の洗剤」「キッチンの洗剤」としては認識しているけど、どんな汚れでどう落ちるのかまでは意識していないんですよね。

木村:
多くの方がそうなんです。たとえば浴室の場合、石けんカスや水あか、皮脂汚れなどさまざまな汚れが混ざっています。石けんカスや水あかはアルカリ性の汚れなので酸性洗剤で、皮脂汚れは酸性の汚れなのでアルカリ性の洗剤で落とします。汚れは中和させて落とすのが基本。こうしたことを、みなさんご存じないんですね。

飛川:
そういったことを木村さんが掃除をしながら話すと、驚かれると。

木村:
はい。「学校で教えてほしかった〜!」と言われます。でも、恥ずかしがるようなことではなく、掃除は教わったり学んだりしないとわからなくて当然なんですよ。

飛川:
そういう方は、家庭で親から教わることもなかったんですよね?

木村:
こうした生活の知恵というのは、親より祖父母から教わることが多いのですが、今の30代、40代くらいの方は祖父母とあまり同居してこなかった世代なんですね。

飛川:
たしかに、核家族で育った人が多いですよね。1980年代には核家族世帯が6割になっていました。

木村:
それから、掃除というのはちょっと特殊で、継承されにくいんだと思います。住む人が変わったり、住む家が変わって素材が変われば、汚れのつき方も落とし方も変わる。住環境はどんどん変わってきているので、祖父母や親から教わっていたとしても同じようにはできないんです。

飛川:
料理のレシピみたいに、「はい、この材料とこの手順で完成するよ」とはいかないんですね。

木村:
その通り。自分の住まいに合った掃除方法にアップデートが必要なんです。一方で、親が習慣にしていたことは受け継いでいたりします。例えば、もらった紙袋を取っておくとか。

飛川:
取っていますね。自分も、なんとなく、ルーティン化しています。

木村:
掃除の話からはちょっとそれますが、紙袋をただ溜め込んでいるだけの人、多いんです。親が紙袋を保管していたから同じようにするけど、使わない。溜め込む習慣だけが継承されているようなアンバランスさがありますね。

飛川:
紙袋は余分にもらうことも多いですよね。

木村:
そうなんです!受け身でいると、紙袋はどんどん家に入ってきます。昔はこれほどもらわなかったはずですよ。

飛川:
紙袋に限らず、家に入ってくるモノの量は増えていることになりますか?

木村:
もらうものも、買うものも確実に増えています。まず、何かを直して使うということが減っていますよね。穴が空いたり、調子が悪くなると、すぐに買う。買うことへのハードルが下がっているんですね。

飛川:
だから家庭にモノがあふれてしまうんですね。油断すると入ってきてしまうモノを、入れないようにすることが必要な時代だと感じます。今の子どもはモノも情報もあふれている時代に生きているんだなぁ。

木村:
そうですね。今は子どもでもスマホを使う時代ですから。

飛川:
時代の変化がめまぐるしいですね。単純に、70代、40代、10代の3世代がいたとして、まるで違う世界を生きているような…。

木村:
電話ひとつ取っても、黒電話だったものに留守電機能がついて、さらに携帯電話、スマホと変わってきています。だから、それぞれの世代で別の文化を持っていますよね。

飛川:
それなのに、紙袋を保管する行動だけは受け継いでいると。

木村:
親の世代の余韻なんですよね。紙袋を大事に保管して活用していた世代、それを見て育って保管する行動だけ継承した世代。

飛川:
今の子どもたちは紙袋の保管はしないかもしれないですね。レジ袋有料化でエコバッグを持ち歩く時代ですし。そうした著しい変化の中で生きてきた人たちが、家族として混じり合って暮らすのが今の時代なんですね。

掃除のモヤモヤ、
その正体は気遣いかも?

飛川:
いろいろな世代が混じって暮らす世帯では、家事にどんな課題が出てきていると思われますか?

木村:
今は共働きの家庭が多いですから、家事はますます継承されない時代です。パパやママが家事をしている時に、少し前は子どもがそばで見ていたものですが、今の子どもにあまりそういった時間はないですね。習いごとや学習塾で不在にしています。

飛川:
それに、遊びの種類も豊富ですよね。「やることなくて暇だから、キッチンでママが夕飯の支度するの見よ〜」ということが減っています。

木村:
今はママのほうでも、仕事が終わって帰宅してから作るのであれこれ教えるゆとりはないですよね。家事はスキマ時間でやるものになってきています。それぞれに別の過ごし方をするのは多様性の尊重とも言えますが、家事のプロセスはシェアされないですね。

飛川:
共働き世帯が多くなったことで、家事シェアは進みましたよね。お風呂掃除はパパの担当っていう家庭、日宣が発行している暮らしのメディア「Pacoma」の取材でもよく聞きます。

木村:
掃除は場所ごとの担当制が多いですね。効率的ですが、ここでも「それぞれの時間」を過ごしていて、自分のやり方で合っているのか検証する機会が持てません。

飛川:
おそらく、以前より個人そのものが尊重されているし、夫婦間で感謝の気持ちも伝え合っている。ただ、掃除の場合は「個人の尊重」が裏目に出ることもあるということでしょうか?

木村:
そうなんです。家事シェアが進むことで感謝の気持ちが生まれますが、遠慮も生まれます。たとえばパパがお風呂掃除したあとに、ママが「カビが残っているな」と思っても、「でもせっかくやってくれたし」と伝えなかったり。

飛川:
場所ごとの分担制にすることで、誰かの「領域」になるというのもあるかもしれません。パパの領域に対して、ママが遠慮してしまう…。このモヤモヤ、「隠れ不満」として溜まっていきそうです。もっとオープンになれないものでしょうか?

木村:
ハウスクリーニングを活用してもらうというのも、ひとつの手ですね。家族内で指摘しにくいなら、第三者から伝えてもらうんです。または、「掃除のプロが言ってたよ」「テレビで見たんだけど」などの第三者話法も有効だと思います。

飛川:
その場にいない人の発言のほうが受け入れてもらいやすいことありますよね。

木村:
それから、場所ごとの担当制でも「誰かの領域」にしないで、共通認識をつくることも大切です。

共通の「ゴール」が
カギとなる!?

飛川:
「共通認識」というのは、掃除の仕上がりを設定するということでしょうか?

木村:
そうですね、「ここまでキレイにする」というゴールを設定するといいと思います。私は「輝き」をゴールとしています。

飛川:
さすが!でも、最初から「輝き」を目指すのはハードルが高いかもしれません(笑)

木村:
最初からは難しいけど、「そこそこキレイ」より「輝き」を目指すほうが掃除の原動力になるんです。私は汚れを取るのは通過点だと考えていて、その先の輝きを見るために掃除しています。だから、汚れが取れていく途中の段階もワクワクしますよ。

飛川:
木村さんのお客さまは、楽しそうな掃除の様子や「輝き」を目の当たりにできるんですね。

木村:
ゴールの「輝き」を実際に見ると、絶対掃除したくなるはずです。実際に、お客さまは「そんなにキレイになるなら掃除したい!」と、動き始めますから。登山と同じですね。頂上にたどり着くとわかっているから楽しく登るわけで、頂上に着くのかどうかがわからない道のりだと不安でストレスが溜まる一方です。

飛川:
だからこそ、掃除方法を学ぶ場や機会がもっと増えるといいですよね。

木村:
はい、その為にも「掃育」を広めていきたいと思っています。掃除の方法や洗剤選びを変えたら落ちなった汚れが落ちた!そういう経験もしてもらいたいです。きれいになることがわかっている掃除は本当に楽しいですから。「こうすると汚れが落ちる」と結果が明らかなら、設定するゴールにも現実味が出てきますよね。

飛川:
共通認識としてゴールが大事なのって、組織と同じですね。会社では、同じゴールを目指す社員同士でどうコミュニケーションを取るか、どう意識合わせをするかという課題が常にあります。最近だとそこにツールを入れたり、メソッドを活用したり。世帯でも、そうした課題意識やソリューションが必要な時代なのかしれないですね。

木村:
仕組みづくりは必要になってきていますね。大掃除みたいないつもより時間を割く掃除の機会に、共通認識や仕組みをつくれるといいと思います。

飛川:
共働きで仕事に向き合う人が増えたなら、組織で行われている課題解決までの流れや考え方を世帯でも取り入れられそうです。組織でもサービスやツールを活用しているんだから、ハウスクリーニングに頼んでみようとか、いろいろな洗剤を使ってみようとか。

木村:
ハウスクリーニングももっと気軽に活用してもらいたいですね!ゴール設定の参考にもなると思いますよ。

飛川:
今日はありがとうございました!

まとめ

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